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機構について
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ご挨拶
再生可能エネルギーは将来の主力電源として期待されており、その中でも洋上風力は切り札として位置づけられています。政府は2025年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画で風力発電の電源全体に対する割合を2040年に現在の1%から4~8%まで伸ばす方針を示し、特に洋上風力は2030年までに10GW、2040年までに30~45GWという数値目標を掲げています。このため、領海内の主に着床式の洋上風力発電を振興するために、長期的・安定的かつ効率的な発電事業の実現、海洋の多様な利用等との調和、公平性・公正性・透明性の確保、計画的かつ継続的な導入の促進を謳った再エネ海域利用法を2019年4月に施行しました。
一方で、本年(2025年)6月にされた再エネ海域利用法の改正案では、洋上風力の排他的経済水域(EEZ)への進出を法制化しました。EEZは水深が50m以上となるため着床式ではなく浮体式となります。前後して経産省は2025年7月に、浮体式洋上風力の案件目標として、2040年に15GW(プラス海外案件30GW)を掲げました。これらの部材(残念ながら風車以外)を国内で調達するとすれば、サプライチェーン全体でのべ数兆円規模、電力売上げで年間数兆円規模の巨大産業が生まれることになります。そこで産業界は、浮体式の大規模な商用化や国内産業創出等に貢献するため、発電事業者が連合した「浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)」や、建設業界を中心とした「浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)」を作って、技術課題に挑戦しようとしています。
このような中、東京大学がこの一大産業創出に関わることは責務と考えています。産業界にとっても、動揺する浮体上での最大限の発電効率を引き出すための技術開発、コストダウンのための素材開発、効率的なメインテナンス技術、気象海象条件における浮体と風車のデジタルツイン、沖合漁業に貢献する浮体を利用したモニタリング、国際連携の橋渡しなど、企業が抱える課題に大学と共同して取り組むことは大きなメリットとなるはずです。
ただし、浮体式洋上風力の開発と運営は様々な学問分野が関わる複合領域となり、企業が大学と共同しようにも話の持っていく場所は一研究室ではなくなるでしょう。そこで、東京大学として浮体式洋上風力に関わる研究者が一堂に会する大きな連合体を作り、産業界の受け口となって、産学連携して課題解決に協力する組織として連携研究機構を作るに至った次第です。産業界からの多種かつ複雑な課題が持ち込まれ、これを解決するために様々な部局から教員が集うことで学融合が生まれ、このような環境の中で研鑽を積んだ人材を社会に輩出する、本連携研究機構がこのような温床となることを期待してやみません。
再生可能エネルギーは将来の主力電源として期待されており、その中でも洋上風力は切り札として位置づけられています。政府は2025年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画で風力発電の電源全体に対する割合を2040年に現在の1%から4~8%まで伸ばす方針を示し、特に洋上風力は2030年までに10GW、2040年までに30~45GWという数値目標を掲げています。このため、領海内の主に着床式の洋上風力発電を振興するために、長期的・安定的かつ効率的な発電事業の実現、海洋の多様な利用等との調和、公平性・公正性・透明性の確保、計画的かつ継続的な導入の促進を謳った再エネ海域利用法を2019年4月に施行しました。
一方で、本年(2025年)6月にされた再エネ海域利用法の改正案では、洋上風力の排他的経済水域(EEZ)への進出を法制化しました。EEZは水深が50m以上となるため着床式ではなく浮体式となります。前後して経産省は2025年7月に、浮体式洋上風力の案件目標として、2040年に15GW(プラス海外案件30GW)を掲げました。これらの部材(残念ながら風車以外)を国内で調達するとすれば、サプライチェーン全体でのべ数兆円規模、電力売上げで年間数兆円規模の巨大産業が生まれることになります。そこで産業界は、浮体式の大規模な商用化や国内産業創出等に貢献するため、発電事業者が連合した「浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)」や、建設業界を中心とした「浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)」を作って、技術課題に挑戦しようとしています。
このような中、東京大学がこの一大産業創出に関わることは責務と考えています。産業界にとっても、動揺する浮体上での最大限の発電効率を引き出すための技術開発、コストダウンのための素材開発、効率的なメインテナンス技術、気象海象条件における浮体と風車のデジタルツイン、沖合漁業に貢献する浮体を利用したモニタリング、国際連携の橋渡しなど、企業が抱える課題に大学と共同して取り組むことは大きなメリットとなるはずです。
ただし、浮体式洋上風力の開発と運営は様々な学問分野が関わる複合領域となり、企業が大学と共同しようにも話の持っていく場所は一研究室ではなくなるでしょう。そこで、東京大学として浮体式洋上風力に関わる研究者が一堂に会する大きな連合体を作り、産業界の受け口となって、産学連携して課題解決に協力する組織として連携研究機構を作るに至った次第です。産業界からの多種かつ複雑な課題が持ち込まれ、これを解決するために様々な部局から教員が集うことで学融合が生まれ、このような環境の中で研鑽を積んだ人材を社会に輩出する、本連携研究機構がこのような温床となることを期待してやみません。
浮体式洋上風力エネルギーと関連技術国際連携研究機構長
教授
佐藤 徹
概要
カーボンニュートラル社会実現の中核を担う再生可能エネルギー主力電源化の切り札として洋上風力発電が期待されており、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画でも、2030年までに10GW、2040年までに30~45GW(1GWは、エネルギー変換効率の違いを無視すれば大型原子力発電所一基分に相当)の案件形成を目指すと記載されている。特に、着床式に適した遠浅な海域の少ない日本では、浮体式洋上風車の開発と実装が鍵を握り、加えて、台風等が襲う厳しい風況海況で20年を超える長期間にわたり、安定して稼働することが必須となる。現在、浮体式洋上風力は世界的に研究開発を競っている段階であるが、日本にはこの分野を担う専門の研究機関が存在せず、大きなボトルネックとなっていた。東京大学では、複数の部局に分散する様々な研究者が、風力発電、浮体工学、電力・グリッド、港湾・船舶・海洋工学、ICT、HPC(High Performance Computing)、海洋政策・エネルギー政策等で個別に世界に伍する研究開発を進めてきているが、こうした個々の努力を進めるだけでは不十分である。浮体式洋上風力発電を実現し、カーボンニュートラル社会を支える主力電源の一つとして大量の浮体式洋上風力発電をリーズナブルなコストで大規模かつ20年を超える長期間安定的に運用していくために、本連携研究機構では、既存の部局の壁を越えて、広く学内の総合知を結集し、浮体式洋上風力エネルギーと関連技術の研究開発を深化・加速し、国や産業界、社会との協力・連携、海外の研究拠点機関と連携しながらこの分野を牽引し、カーボンニュートラルでレジリエントな社会実現に貢献する。そして、台風等が襲うアジア太平洋地域の厳しい風況海況環境下で効率的に安定して長期間稼働可能な浮体式洋上風力発電システム(日本モデル)の実現を目指すとともに、これらの研究を進める中で、この分野のアカデミア、国、産業界、国際プロジェクトをリードする高度専門人材を育てる。
設置目的
本連携研究機構では、複数の部局に分散する、風力発電、浮体工学、電力・グリッド、港湾・船舶・海洋工学、ICT、HPC、海洋政策・エネルギー政策等の幅広い学術と研究者群を結集し、浮体式洋上風力エネルギーと関連技術の研究開発を深化・加速し、国や産業界、社会、海外機関と連携しながらこの分野を牽引し、社会に貢献する。具体的には、アジア太平洋地域の厳しい風況海況環境で効率的に安定して長期間稼働可能な浮体式洋上風力発電システム(日本モデル)の実現を目指す。その際、先端技術の研究開発と並行し、大気海洋や漁業、地域との共生や環境アセスメント、及び海事政策・エネルギー政策の観点からも総合的に解決策を探るべく同時に研究を進める。これらの研究を進める中で、国内外のこの分野のアカデミア及び国、産業界、国際プロジェクトをリードする高度専門人材を育てる。
設置予定期間
令和 7 (2025) 年 10月 1日 ~ 令和17 (2035) 年 3月31日
設置目的
1.
浮体式洋上風力エネルギーと関連技術に関する総合的な研究
2.
アジア太平洋地域の厳しい風況海況環境で効率的に安定して長期間稼働可能な浮体式洋上風力発電システム(日本モデル)の実現